エホバの証人はムチ(鞭)に関してどのように教えていたのでしょうか?
教団内ではどのようなことが行われ、信者はどのような親子関係を築いていたのでしょうか?
この記事では、エホバの証人が教えていたこと、実践していたこと、組織への関与を見ていきましょう。
鞭は児童虐待であるだけではなく、子どもに深い傷を与える
厚生労働省の基準による児童虐待
厚生労働省が22年12月27日に発出した「宗教の信仰等に関係する児童虐待等への対応に関するQ&A」によれば、「宗教活動等への参加を強制することも含め、理由の如何にかかわらず、児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある体罰を行うことは身体的虐待に該当する」という明確な基準を示しました。

鞭をすることは、児童虐待(身体的虐待)です。
脳に与える影響
福井大学子どものこころの発達研究センター発達支援研究室および本学附属病院子どものこころ診療部で小児科医の友田明美氏は、論文において「厳格な体罰(頬への平手打ちやベルト,杖などで尻をたたくなどの行為)を長期かつ継続的に受けた人
たちの脳では,前頭前野の一部である右前頭前野内側部の容積が平均19.1%も小さくなっていた」ことを報告しています12。

エホバの証人出版物の記載はどうなっているか?
鞭に関して、古い出版物はどうなっているのか?

エホバの証人の信者は子に鞭(体罰、虐待)をするように教えていました。例えば、ものみの塔1954年4月1日の「子供を懲らしめて生命を得さす」という記事によれば、「家の秩序を保つ保つためなら文字通りの鞭を用いることが必要でありましょう(P131)」とされていました。この記事には子どもの尻を鞭で打つ挿絵がついていました。
鞭に関して、新しい出版物はどうなっているのか?
一方、比較的新しい出版物である1992年9月8日号目ざめよ誌「「懲らしめのむち棒」― それは時代後れですか」では、鞭による体罰があったことを暗に認めつつも「教え正すという懲らしめの所期の目的を踏み越えるなら,児童虐待に至りかねません」と掲載し、体罰があったことを認めつつも児童虐待に至らない程度にしなければならない、としました。一見、児童虐待には歯止めがかかったように見えます。
エホバの証人の鞭(ムチ)による児童虐待、現実はどうか?
では現実はどうかといえば、2022年に行われた社会調査支援機構チキラボの調査では、エホバの証人2世のうち8割以上が「家族からの体罰を経験した」と回答した3。また、近年でも鞭を受けた被害者による証言が多数あります456。
ムチ(鞭)による児童虐待の実態
JW 児童虐待被害アーカイブの調査より
JW 児童虐待被害アーカイブは、宗教を背景とした児童虐待に関連し、宗教団体「エホバの証人」の児童虐待実態調査の報告書を、同日、厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課虐待防止対策推進室長の提出しました。
2023年3月15日、「JW 児童虐待被害アーカイブ」が記者会見で情報を明らかにしました。ファイルはこちらからダウンロードできます。

6割が精神的な後遺症があると回答しました。関連記事はこちら。

チキラボによる調査
社会調査支援機構チキラボによる1133人の実態調査に掲載されているエホバの証人の二世信者の声をご紹介します(『宗教2世』当事者1,131人への実態調査,チキラボ,2022年)。
週 3 回の信者の集まりに 0 歳から連れていかれ、そ
こで静かにできないと、鞭をされていたとのこと。0 歳
の頃のことは記憶ないが、母からそう聞いている。
集会や奉仕への参加。意義ある仕方で参加し模範的
であること。小さいうちは親の言う通りにしないと鞭
をされたので従うしかなく、半ば過剰適応していた。
大きくなってからは、教団には違和感を持っていたが、
母を悲しませたくない動機で合わせていた。
週3 回の集会と、年に数回ある大ホールでの集会で
す。インテックス大阪などを借りていたこともありま
した。土日や空いている夕方に奉仕活動(訪問や電話
など)を求められました。生まれたときからこういう
状態だったので当たり前のことと思っていましたが、
嫌だなあとは感じていました。行かないと鞭で叩かれ
たり親が不機嫌になりそうなのが嫌で「自分から進ん
で行っているんだ」と思い込もうとしていました。
家から家に宣教する奉仕活動や 週3日の集会●集
会の予習や復習●祈ること●世に属すると組織が判断
したものから距離を取らせられる(テレビ●漫画●ゲ
ームの禁止)。逆らう●嫌がる●うたた寝してしまう●
などは全て鞭の対象でした。夏休みも冬休みも楽しい
ことより辛いことの方が多かった。
集会に出席して注解までしなければ鞭で叩かれ、食
事も与えられなかった
懲らしめの鞭(お尻を叩かれる)は、3歳位はよく
あって、兄弟喧嘩の度が超えてたらたまに叩かれた。
7歳くらいの頃に、野球をしたいと強く訴えたら、お
尻を叩かれたので、お尻の痛みより、夢を諦めなきゃ
いけないと思い知らされた。
小さい子供の頃、集会で大人しく座っていられない
等の理由で皮のベルトでお尻を叩かれた。会館と呼ば
れる集会所には懲らしめの部屋があり、誰でも使える
皮でできた鞭が複数置かれていた。叩かれていた時は
ものすごい恐怖を感じたが、自分が悪いんだ、とも思
っていた。しかし、今、冷静に考えると身体的、また
精神的な虐待であったと思う。
木の棒やゴムホースでお尻を直接(何も履かない状
態で)叩かれた。40 回叩かれることもあった(なぜ40
回だったのかはよく覚えていないが、聖書に根拠があ
ったような気がする)。しょっちゅう赤いみみず腫れが
できていた。自分から服を脱いでお尻を出さなければ
ならず、怖いので出せないでいると何時間も母親とに
らみ合いの状態が続いた。お尻を出せるまで納戸に閉
じ込められることもあった。とにかく痛くて怖くて嫌
だった。
ほんの少しの嘘、言う事を聞かなかっただけで罰と
みなされ鞭棒でお尻を叩かれる。親に決して本音を言
ったり逆らえない恐怖との戦いだった。
ガスホース、ハイヒールの裏、ベルト、梱包する硬
いビニールロープ、孫の手、定規、綿棒、靴べらなど
での鞭打ちを受けました。教義に反する事をしてしま
った時や、母の機嫌を損ねた時にありました。逃げる
と回数が増えるよ、と脅され、下着まで脱ぐよう強要
され、お尻を鞭打たれました。動くと太ももや腰に鞭
が当たり辛かった。
お尻や身体を叩く。鞭や棒や布団たたきなどで。押
し入れやタンスに閉じ込める。外に出されてご飯抜き。
大声で長時間罵られる。集会中にお祈りの時に目を開
けたら、太ももを思い切りつねられる。
集会や布教に行きたくないと言うとお尻を出して電
気コードで何十回も叩かれました。皮膚がさけました。
悲しくて辛くて苦しくて怖かったけど私が悪いからだ
と言いました。親は宗教活動をしないと本当に世界の
終わりに滅ぼされると教団の教えを信じていたので、
これも親の愛なんだと思うようにしむけられていまし
た。お祭りや友達の誕生日パーティーも行きたいと言
うと鞭で叩かれます。祭り事や楽しいことは全て禁止
で破ったら鞭です。友達からの誕生日プレゼントも自
ら捨てるよう指示されました。受け取ってしまった時
点で体罰です。悲しくて友達にも悪いなって気持ちで
いっぱいでした。
その他にもたくさんの調査があります。
マスコミ報道によるもの
マスコミによる報道もありますので、こちらもご覧ください。
東洋経済オンラインによるもの
毎日フラッシュバックする「宗教虐待」の心の傷 宗教2世を苦しめ続ける「時間の献金」と体罰
宗教虐待で心を病んだ兄が親から絶縁される残酷 社会的に孤立させるエホバの証人の「排斥」
脱会した宗教2世が「母に会えない」過酷な現実 エホバの証人と出会い、家族がばらばらに
信者家族「たたかれた子」と親の間の埋まらない溝 「信仰心による体罰」責任を負うのは親だけか
宗教2世の私が悩み苦しみ抜いた末に悟ったこと どのような信仰集団にもつきまとう3つの課題
毎日新聞によるもの
「親から体罰、希望していた受験もできず」 エホバの証人3世訴え
エホバの証人、子どもへの「むち打ち」はなぜ? 教団広報に聞く
文春オンラインによるもの
ムチを打てない人は「子どもをサタンから守れない人」 “エホバの証人”元二世が明かす異常な“懲らしめ”の実態”.
エホバの証人教団幹部の鞭(ムチ)へ関与はあったのか?
被害者の証言
弁護士の田中広太郎氏は被害者の調査をした結果を公表し、「巡回監督」という幹部信者が主導した実態を説明しています。
まず巡回監督と呼ばれる組織幹部が虐待用道具「ムチ棒」を信者に配ります。工場で入手した特殊工業用ホースで極めて頑強な上に(多くの拷問道具同様)やや柔軟性があるため子供の身体に食い込みやすくより激しい痛みを与える性状のものです。親が渾身の力でこれで子供を殴打します。

組織がらみの関与があったと疑われる内容です。
鞭を促進するエホバの証人の「巡回監督」とは?
巡回監督は、長老の中から模範的であることを条件に選ばれた、いわばエリート信者あり幹部信者です。一般の信者からは尊敬の目で見られるし、巡回訪問中は様々な場で信者に対して講演や挨拶をする指導的立場にあります。
この巡回監督の口頭での指導は信者に多大な影響を及ぼします。指導の一環として、巡回訪問中に、巡回監督は信者からの相談を受けることが多いです。相談事項には、例えば、子どもを大学に行かせても良いのか?鞭をどの程度すればいいか?など後に述べる児童虐待につながるようなものもあります。これは教団の発行する出版物が大量にあって、教えが変化しているために、信者にとっては最新の指導を求めるという側面があります。
巡回監督はこのような相談に対して口頭で指導します。信者の信頼を背景に監督の立場を通して行われる指導は信者に絶大な意味を持ち、信者の行動を支配することになります。そして、神権組織の項で述べたとおり、組織批判は絶対的タブーのため、巡回監督の指導にも異議を唱えることは困難であり、相談した信者は従わざるを得ません。結果、上記の例で言えば、巡回監督が大学について好まくないとの指導をすれば親は子を大学に行かせない。また、鞭が好ましいとの指導をすれば親は鞭をするといった具合です。
上述の通り、巡回監督の指導は口頭のため証拠が残りにくいものの、教団教理を実際に運用するために強力な役割を果たしています。
エホバの証人の鞭による死亡事例
エホバの証人の鞭による死亡事例
エホバの証人のムチの教理に基づく過酷な体罰による死亡事例がありました。

この記事は日刊紙「赤旗」1994年8月8日付けに報道された記事のコピーです。
「エホバの証人「せっかん死」事件を考える「信仰の重さ痛感」
若い夫婦の体罰で、4歳の二男が死亡した事件の判決が7月29日、広島地 裁でいい渡されました。夫婦はものみの塔(エホバの証人)の熱心な信者。 事件にも「信仰」が強くかかわっていました。シリーズ「現代こころ模様」 のいっかんとして、この事件を考えてみました。(柿田睦夫記者)
事件(別項)に至るまで、夫婦は二男の「過食」に悩みぬいていました。 家でも外でも、手当たり次第に盗み食いし、落ちている物まで口に入れよう とする。裁判資料によれば「精神的過食症」、つまりストレスを解消するための方法を食べ物に向ける症状だと見られています。
何とかしなければ、最初はおしりを打っていたのが、頭も顔も打つように なり、食べ物を制限してみたり、逆に好きなだけ与えてみたり、倉庫に閉じ 込め、縁側にしめ出す。その時間も長くなり、冬の夜間にも及ぶ。‥‥‥しつけのつもりの体罰がエスカレートしたすえの痛ましい事件でした。
”体罰は子の命を救う”と
児童虐待。格家族化や人間関係の変化で、組談する相手も失った「社会病理」。事件後、マスコミでもさまざまな指摘がされました。
同時に、裁判を傍聴し、関係者の話を聞いて強く感じたのは、やはり「信仰」の重み。体罰によるしつけが、「過食」というものに関する無知に加えて、夫婦が当時信仰していた宗教と深く関連していた」(弁護人最終弁論) からです。
すべて、ものみの塔の教義と、二人が所属していた会衆の長老夫妻(別項)の指導によるものでした。
ものみの塔は、子育てを「訓練」と位置づけ、「体罰は子どもの命を救 う」「細棒をもってあなたは彼をかたたくべき」(教理解説書)と教えま す。おしりを打つためのムチ棒は、長老夫妻から渡されました。ムチ棒のか わりにビニールホースを使ってもよいことや、食事を制限したり、閉じ込めたり、しめ出したりするのも同じ。すべて「少しの間家族から仲間はずれにするのは、おしりをたたくよりも効果的」(前掲書)などという教理にもとづく助言でした。
しつけを急がねばならないという事情もありました。ハルマゲドンという、この世の終わりを告げる最終戦争が迫っている。そのあとにくる神の楽 園に生き残るには、エホバの証人として神の律法を守っておかねばならない。子どもを正しく育てるのもその一つだからです。「悠長に備える時間は ない。緊急を要することだと教えられた」と、夫は証言しています。
反省の状況を見て執行猶予
そして、エホバの証人以外の人々はサタン(悪魔)の支配下にあるから深く交わってはいけないという教え。そのため夫婦は「広く適切な助言を受け る機会を全く閉ざされていた」(最終弁論)
エホバの証人の訪問伝道に接して以後、とくに夫は証人たちの”穏和な” 人柄にひかれ、自分もそうなりたいと努力していたそうです。「夫はがまん強くなり、二男にたいしても感情だけで接してはいなかった」と妻。二男も 父親になついていたそうです。
それだけに、なおつらい。もし、外部の人ともかかわっていたら、過食についてし医師の助言を受けたり、児童相談所などを訪ねることができていた ら‥‥‥と。
被告人である夫も、証人として出廷した妻も、ともども「教えにたいし未熟だった」「生活が宗教一筋になってしまっていた。いろんな人と知り合い、考えていかなければと、いま思っている」と証言しました。
事件に至る事情や反省の状況を見て執行猶予をいい渡した裁判長は、被告にこう語りかけました。「子どもの成長を気長にみて、周囲の人の意見にも耳を傾けながらやってほしい」。
この事件と判決について、宗教法人ものみの塔聖書冊子協会は、本紙にたいし「コメントを控えさせていただく」とのべています。
事件と判決
「赤旗」1994年8月8日付け
昨年11月、当時4歳の二男が無断で夕食を食べ散らかしていたため、父親(27)が足でけり、おしりや顔面をビニールホースで殴 り、裸にして縁側にしめ出し、水を浴びせて一晩中放置し、凍死させた。判決は、検察側主張の傷害致死罪を退け、暴行罪と保護責任者遺棄致死罪を適用、懲役3年、執行猶予4年とした(求刑は懲役4年の実刑)
本記事は、エホバの証人情報センター保管庫より、転載しております。
これに対する教団広報

こうした事例がある一方で、2023年3月5日に放映されたサンデージャポンでは、教団広報は左のようにコメントを出しています。
動画はこちら。
「日本でエホバの証人の組織的な不法行為が認められた例は下級審を含めて一つも存在していない。」
エホバの証人 日本支部広報部門
赤旗の報道が事実だとすれば、教団広報は虚偽と言えます。広報部門のコメントでは「組織的な」と限定しているので、教団広報が赤旗報道の裁判例まで確かめて強弁しているとすれば、長老の指導は組織ではないと言っているに等しいです。教団としてのムチ事例はあった。しかし、組織的ではない、と主張しているのでしょうか。
まとめ
時系列でまとめれば、以下のようになります。
1950年代には出版物でムチを促進
1992年には出版物で「過度のムチは児童虐待」と一定の歯止め
その後も巡回監督による促進が行われた(時期は不明)
1994年には死亡事例(長老という幹部信者の関与あり)
2022年の調査では、被害者の声が多数
上記のように考えると、1992年以降のムチは行われていたと考えるのが妥当ではないでしょうか?
- 友田明美,被虐待者の脳科学研究,児童青年精神医学とその近接領域 57( 5 );719─729(2016)
- Tomoda A, Suzuki H, Rabi K et al. (2009b): Reduced prefrontal cortical gray matter volume in young adults exposed to harsh corporal punishment. Neuroimage, 47 (Suppl 2), T66-T71.
- 『宗教2世』当事者1,131人への実態調査,チキラボ,2022年
- 『解毒 エホバの証人の洗脳から脱出したある女性の手記』角川書店、坂根真実、2016年。ISBN978-4-04-103709-6。
- “ムチを打てない人は「子どもをサタンから守れない人」 “エホバの証人”元二世が明かす異常な“懲らしめ”の実態”. 文春オンライン
- 信者家族「たたかれた子」と親の間の埋まらない溝「信仰心による体罰」責任を負うのは親だけか,東洋経済オンライン,2022年